オフィス内に個室を生み出す【ブライアン・チェン/ROOM社】

Leader's Info

ブライアン・チェン氏は、オフィス内に組み立てられるブースを提供するROOM社(ニューヨーク)の共同創業者兼CEO。


同氏は、共同創業者のモーテン・マイズナーとともに、企業がより良い職場環境を作るサポート役となるため、2018年5月にROOMを設立。同社は現在、スタートアップ企業からフォーチュン500企業まで4,500社以上の顧客を持つ。企業が職場環境を次世代のワークプレイスに適応できるように、未来型オフィスの創造を目指す。

ブライアン・チェンCEOはこれまでのキャリアの大半を技術系スタートアップ企業に費やしてきた。従来のワークプレイスの課題として、職場環境が従業員の生産性・幸福度・イノベーションに与える影響について精通している。

また、彼はスタートアップアクセラレーターでありDropboxやAirbnbを輩出しているY Combinatorの卒業生であり、スマートなスーツケースを提供するブルースマートの共同創業者でもある。

Leader's Viewpoint

ーーROOMブランドの歴史を教えてください。

ブライアン・チェンCEO(以下、チェン) :ROOMは、世界中で未来型オフィスを作るために、現代のワークプレイスを再構築しています。2018年5月に事業を開始したとき、私たちが目指したのは複雑な建設に取って代わる迅速かつ手頃な方法を導入することでした。シンプルでインスピレーションに満ちたROOMのモジュール式アーキテクチャ・ソリューション(小規模かつ独立的な設置方式)は、仕事においてプライベート空間で集中できるための部屋や、コミュニケーションを取りながら共同作業をするチームワークなど、チームが簡単に仕事環境を作ったり、再構築したりすることを可能にするものです。

その結果、型にはまった構造やアイデアに頼ることなく、ダイナミックで常に変化するワークスペースを実現しています。ニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドン、ベルリン、シドニーなど世界各地にオフィスを構えるROOMは、ナイキ、Google、サムスン、Roche、Uber、Walmart、JPモルガンなど、新進気鋭のスタートアップ企業からフォーチュン500まで、4,500社以上のお客様により良いワークプレイスを提供しています。

ニュヨークオフィスにあるショールーム

ーー新製品を生み出す際のインスピレーションは何ですか?

チェン:組織にとって人は最も重要な資産であると考えているので、お客様が第一のインスピレーションとなります。私たちは、お客様の視点に立ち、お客様のアイデアを実現するための空間をデザインします。企業が最高の人材を育成し維持するために、未来型ワークスペースは利用する人に向けてデザインしなくてはなりません。

機能的なニーズを満たすだけでなく、斬新性も兼ね備えた、より良い働き方をインスパイアするものでなければなりません。ワークプレイスはこれまで以上に、イノベーション、生産性、そして文化的な結びつきを育む場所となるべきです。

私たちROOMは、人と人との間に価値のある時間を生み出し続けるために存在しています。私たちはオフィスを団結の場として捉え、組織の最も強力なツールのひとつである「つながり」を強化するためのインフラと位置づけています。どこにいても仕事ができるハイブリッド・ワークスペースの台頭により、企業は社員に出社の必要を迫ることが難しくなっています。

これからのオフィスは、モチベーションとインスピレーションを得られる魅力的な場所であると同時に、組織の最大の資産である人材を育成・維持するために、人と人との強いつながりを実現していく必要があります。

ーーどのような市場を対象としていますか?

チェン:私たちのお客様は、クリエイティブな小規模のスタートアップ企業から、大規模なハイテク企業やフォーチュン500の有力ブランドまで、あらゆる市場セグメントをカバーしています。不動産部門の責任者をはじめ、施設、ワークプレイスデザイン、人事の各チームと直接連携し、建築家やデザイナーともパートナーシップを組んでいます。

ーー新製品を作るプロセスを教えてください。

チェン:ROOMでは、単に壁のある部屋を作るのではなく、より生産性の高いワークスペースを作っています。私たちは、誰にとってもより良い仕事環境を実現するために、あらゆるディテールに目を向けています。創造性を高めるためのスペース、静かに過ごすためのスペース、共同作業のためのスペースなど、目的を想定することからあらゆるデザイン設計は始まります。

より良い働き方を実現するために必要なものだけをデザインすることで、使い勝手が良く、親しみやすい製品を生み出すことができるのです。また、私たちはすべてのプロセスにおいて、「シンプルさ」と「思いやり」を重視しています。最高品質の素材を使用し、どんなオフィス環境にも不自由なく溶け込むミニマルなデザインを採用しています。

私たちのデザイン理念は、サステナビリティに根ざしています。製品はすべてリサイクル素材を使用して設計されており、環境への影響を最小限に抑えています。実際、当社の各モジュール製品には、1,000本以上の再生ペットボトルから作られた防音材が使用されています。現在までに1,700万本以上のペットボトルを再利用しています。

ーーパンデミックは、現代のワークプレイスの不都合な真実を浮き彫りにしました。

チェン:そもそもワークプレイスはそれほど素晴らしいものではなかったのです。私たちは常に、オフィスは組織の中心であり、組織の成長、成功、進化に必要なものだと考えてきました。しかし、パンデミック以前のワークプレイスに戻ることはできません。COVIDの背景を抜きにしても、オフィスは何年もの間、私たちのビジネスや労働力に見合っていなかったのです。

パンデミックにより、働く場所や方法を選べるようになったことで、オフィスに行くことが当たり前ではなく、意識的な選択になりました。私たちはより良い未来を築き上げ、ワークプレイスを再構築しなければなりません。デジタルで繋がるモジュール式のワークプレイスは、業務を向上させ、従業員の定着率を高め、変化するビジネスのニーズに適応します。

新しいオフィスは、個人のニーズに対応し、集中して仕事をするスペースや、対面とバーチャル両方での共同作業の場といった、さまざまな職場環境を提供しつつも、多様な働き方の間でバランスをとらなくてはなりません。

それぞれの目的に合わせたROOMのモジュール式のソリューションは、企業が無理なくワークプレイスを形成できるよう俊敏性と柔軟性を提供し、従来の建設にかかる時間とコストを削減し、私たちを取り巻く世界の変化に容易に対応できるようにするために不可欠なものだと確信を持っていえます。

(取材=宮尾卓志 写真=ROOM)


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