読者が作家に直接支払うことで、全く新しいゲームが生まれる【クリス・ベスト/Substack社】

Leader's Info

クリス・ベスト氏は、サブスクリプション型パブリッシング専用のプラットフォームを提供するサブスタック社(サンフランシスコ)の創業者兼CEO。独立系ライターが強固で持続可能なビジネスを構築するために必要なサポートを提供している。

Kik Messengerの共同創業者でもあるクリス・ベストCEOは、サブスタックのミッションをライターの出版を簡単にすることとしています。ウォータールー大学(カナダ)を卒業。

Leader's Viewpoint

私が子供の頃、友達とサッカーをしていた時のことです。仲良し同士でチームを創った結果、最終的には2つの派閥に分かれました。そしてゲーム内での不満が喧嘩に変わりました。

私はいつも、ルールが人に与える影響に興味を持っています。誤ったルールを選択すると、ちょっとした遊びが争いになってしまいます。これは、サッカーをしている子供たちに限ったことではありません。

私は数億人のユーザーを持つメッセージングアプリ「Kik」の立ち上げと構築に携わりました。初期段階における課題の一つは、アプリ内で友人同士がお互いを見つけられるようにすることでした。ただ単に「あなたの友達はKikにいます」と伝えるだけでは少ししか効果がありませんでしたが、メッセージが両方の友達に届いているように感じさせることで、人々が話し始めるきっかけを作りました。その結果、普及率が大幅に伸びて行きました。また、電話番号がなくても簡単にKikに登録できるようにしたことも、成長を加速させるきっかけになりました。

この機能は、電話プランを持たない人にとっては素晴らしいものでしたが、システムを悪用したい人にとっては、少ない投資でスパム行為や悪用を可能にするものでした。結果、優良なユーザーとの信頼関係が損なわれ、解決は困難でした。単にアプリを「より使いやすくしたい」ということと、良い方にも悪い方にも「利用者は成長する」という命題がつきまといます。

だからこそ、他の場所でこのような問題を目にしたとき、私は共感を覚えるのです。例えば、私はTwitterが大好きですが、同時に大嫌いでもあります。何度もアプリを削除して、そのたびに気持ちが落ち着き、スッキリします。しかし、重要な人やアイデアとつながることが可能なので、気がつくとアプリを最インストールしたくなります。しかし、そのたびに、中毒、乱用、怒りの感情が現れては、再び削除したくなるのです。使っていないときにもツイッターは思考に侵入してきます。"ちょっとチェックしてみようかな…" 利用者にとって簡単に交流できなければならないので、悪用も副産物のひとつです。私はTwitterでトラブルを起こすほど有名ではありませんが、他の人に起こった出来事を見ても悲しい身持ちになります。狙われた側の気持ちは想像に難くありません。辛辣な暴徒が人々に嫌がらせをして黙らせることは明らかに悪いことですが、金のなる木を生かしたままそのような行為を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?

さらに興味深いのは、このシステムがどのようにして人々の怒りを助長しているかということです。怒りはモチベーションを高め、人々を巻き込みながら増幅していくので、みんなを怒らせるのは効果的な戦略です。つまり、Twitterのようなプラットフォームは、意見がはっきり分かれるような発言を正確に表示するように最適化されているのです。いわば社会の中枢に爆弾を投下できるのです。Twitterですぐに注目されたいなら、怒りを利用するか、もしくは怒りを利用する人に場を譲ることが容易な選択です。このゲームのルールは、善良な人でも悪い行動を取らせることがあり、友好的な子供でも敵を作ります。

ツイッターを非難するつもりはありません。実は、これらはKikで私たちが直面したのと同じ種類の難しい問題だったのです。Twitterはユーザーの注目を集めることでお金を稼いでいますから、それは中毒、虐待、暴挙を根絶できないことを意味します。

では、どうすればいいのでしょうか?ルールを変えることです。私たちがSubstackを始めたのはそのためです。読者が作家に直接お金を支払うことで、まったく新しいゲームが生まれます。

後で読もうと思っても、後悔することはほとんどありません。面白そうだと思って取っておいた本や記事を手にして、その場で楽しむことができますし、時間を有効活用できたと振り返ることもできます。ソーシャルメディアでの情報収集は、飲み込む前に後悔するようなお菓子を1つ手に入れるようなものですが、事前に読む本を決めておくことは、美味しい料理の材料を集めるようなものです。食後には満足感があります。

読んでいて楽しい作家を信頼するようになる。彼らの作品はあなたをより賢くしてくれます。読みたい作家を前もって決めておくことで、自身をコントロールするためのより良い選択肢を得ることができます。

この経験はとてもやりがいがあるので、自分が最も信頼し、尊敬している作家に数ドルを支払うのは簡単なことです。私たちがサブスタックで育てようとしているのは、このような体験です。お菓子ではなく食事を、喧嘩ではなくスポーツを。

ここでの素晴らしい点は、成長を促すインセンティブが用意されていることです。作家に直接報酬を支払うことを選択する人が増えれば、より多くの作家が参加し、さらに多くの読者がついてきます。発行者と購読者が一緒になって、新しいポジティブなコミュニティを構築することで、すべての人にとってより良いものになっていくのです。

Substack, https://on.substack.com/p/a-new-game

(取材=宮尾卓志 写真=Substack)


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