デジタルアートの世界を誰でも簡単に【オスカー・シエ/Robkoo社】

Leader's Info

オスカー・シエ氏は、音楽をより簡単に学び、作り、共有する方法を提供するロブクー社の創業者兼CEO。

復旦大学を卒業後、製品開発に15年の経験を持ち、企業向けソフトウェア、インスタントメッセンジャー、スマートデバイスなどに従事。WeChatオープンプラットフォームのシニアプロダクトマネージャーを務め、「WeRun(微信运动)」の開発を指揮した。アリババにいたときは、シニアAIプロダクトエキスパートを務めていた。余暇を利用して十数種類の楽器を独学で学び、DIYで電子楽器やMIDI機器を自作する。

Leader's Viewpoint

ーー中国では楽器の普及が進んでないように思うのですが、なぜですか?

オスカー・シエCEO(以下、シエ) :まず前提として、練習するのが面倒くさい、邪魔くさいというのがあるんだと思います(笑)。私はサックスを吹いていますが、近所迷惑にならないように、機材を全部車庫に運び込んでいました。夏場は気温と蚊に悩まされました。

先日、北京に行ったとき、夜11時頃、地下鉄の駅の出口からソーナー(中国式のラッパ)の音が聞こえてきました。近づいてみると、一人の男性が練習をしていました。

最近では、プロの間でもデジタル楽器が普及しています。多くの若者が電子ピアノやMIDIキーボードを手に入れています。年配の方はEWIシリーズのウインドシンセサイザーに興味を持っています。ヘッドフォンで練習しても他人に影響はありませんが、新入生には良いソフトが必要ですし、音の信憑性も気になります。

音楽に関心がないのではなく、良い解決策がないのです。

ーーRobkooのアプリ「JamKoo」はどのようして既存の問題を解決するのですか?

シエ: モバイル・アプリとして、複雑な機材のセットアップから人々を解放します。どんなデジタル楽器を持っていても、スマートフォンやタブレットさえあれば、サウンド、楽譜、バッキングトラックにアクセスでき、自分の作品を演奏、録音、共有することができます。練習のすべてをカバーしてくれます。

これまでは専門的なソフトが提供していた機能ですが、スマートフォンで誰でも使えるようにしました。今では、全国のお年寄りがこのアプリを使用しています。

また、JamKooには、100種類以上の無料のサウンドと、中国の伝統的な民族性を表現したサウンドが用意されており、ほとんどのユーザーが満足しています。JamKooのコミュニティでは、皆さんの作品が上げられており、交流も盛んです。

ーーお年寄りもJamKooを使っているんですね!

シエ:JamKooは本来、演奏ツールであり、ほとんどの人が使用できます。サンプラー機能を追加してからは、生まれたばかりの赤ちゃんも、99歳のおじいちゃんも、そしてペットも、自分の声を楽器にすることができるようになりました。

しかし、ユーザーを2つのグループに分けると:EWIを主に演奏する(ほぼ)定年退職後の音楽愛好家、そしてキーボードを主に演奏する若いデジタル音楽愛好家です。彼らは同じ目的のためにJamKooを使いますが、JamKooは彼らの楽器に応じてそれぞれの体験を調整します。

学生ユーザーの中には、「私のデジタル・ピアノは数百元しかしませんが、JamKooを使えば数万円の価値があるように演奏できます!」と嬉しいコメントをしてくれる人もいます。予算が限られている人にとってこそ、JamKooは真価を発揮します。

一方、JamKooはお年寄りの健康にも貢献しています。私たちの共同制作者の一人は、定年退職するまで楽器を習う機会がありませんでした。今では、EWIを接続して作品を投稿し、3万人のフォロワーを獲得しています。

ーー他にJamKooアプリのメリットなどがありましたら教えてください。

シエ: 私たちは、海外の多くのトップアーティストやオーディオ会社とコンタクトをとっています。彼らによると、JamKooはそのシンプルさがとても新鮮なのだそうです。プロのためだけに特化されたアプリはたくさんありますが、それらは非常に少ない人口だけをターゲットにしています。私たちのゴールは、デジタルアートを簡単にすることです。既存のプレイヤーの欠点を埋めるという私たちの活動のすべては、より多くの一般の人々に利用してもらうためです。

ーーこれから音楽分野で益々ご活躍されると思いますが、最後に一言お願いします。

シエ: 私たちは素晴らしいチームワークを持っており、常にニーズを大事にします。機能面ばかりを高め、パフォーマンスツールとしての価値に留まっていては、本当の成長は望めません。

同じ考え方で、WeChatは中国で成功したAPPになりました。WeChatは基本的にメッセージングツールですが、社会的なニーズに応えるために多くの機能を備えています。JamKooも基本的には演奏ツールですが、音楽演奏者にとって様々な便利機能を備えています。

専門的な分野でNo.1になろうとすると、なかなか達成できず、さらに限られた人たちにしかサービスを提供できなくなってしまいます。反対に、馴染みを持ちやすいエコシステムを確立していくと、人々はなかなか他所へは移りません。我々は常に人々のニーズを解決するエコシステムの構築に励んでいきます。

JamKooは私たちの製品の一例です。私たちの将来的な計画についてのサプライズが、今年の終わり頃にはお知らせできると考えています。私たちはこれからも、常に革新的なミュージックテック企業であり続けます。

(取材=宮尾卓志 写真=Robkoo)


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