生活保護受給者から起業家として一流企業を支援するまでに【ピーター・グラハム/Agreemint社】

Leader's Info

ピーター・グラハム氏はスピーディで柔軟な契約プロセスを提供するアグリミント社(サンフランシスコ)の創業者。

グラハムCEOは以前は、世界的に有名なB2Bソフトウェア企業の営業担当副社長として、長年に渡り勤務。 その間に、スムーズに契約を成立させること。特に異なる地域の様々な関係者との契約を成立させることの難しさを痛感。前職で主席エンジニアを務めていたクリス・ボイス氏を誘い、一緒にアグリミント社を立ち上げた。

Leader's Viewpoint

スタートアップ創業のきっかけ

「何か一つのことに集中して、それを極めなさい」と私は言われてきました。しかし、歴史を振り返ってみると、そのような方法で成功を収めた例は多くありません。

色んな分野で得た知識・経験をもとに、様々な人たちと協働することで初めて革新的なアイデアは生み出されるのです。

私は第二営業部門の副社長として、日本市場も含め多くの地域を担当し、長年に渡って実績をあげてきました。無名だった2つのブランドを、世界中で展開される一流のソフトウェアに育て上げ、ARR(年間経常利益)も数百万ドルに達し、1つのブランドはナスダックに上場させるまでに至りました。

しかし、これだけの実績をあげたとしても、私はまだ1つのスキルしか身につけていませんでした。「物を売ること、そして売るためのチームを管理する」ことを身につけたに過ぎないのです。そこで私は、プロにとって自殺行為ともいえる、製品を一から作る方法を学ぶために、この4年間はコーディングを学びました。また、デザインやビデオ制作の編集も学びました。1つのことを極めてきた者にとってこれらの行為は突拍子もないことに思われるかもしれません。しかし、理由はいたってシンプルで「学ぶため」です。新しいことを学ぶのは大変ですが、この経験は何物にも代え難いやりがいを感じさせます。

これがアグリミントの設立につながっています。アグリミントは、世の中にありふれた「法務事での行き詰まり」という決まり文句を解決するソリューションで、私が営業時代に重要性と難しさを痛感していた問題です。周りにいる最も優秀な人たちを採用し、一緒に働くことで、私たちは真の革新的なソリューションを提供できるようになりました。

サービスのポイント

ビジネスにはニーズがあり、それは階層化されています。 しかし、契約ではさまざまなニーズの階層を把握することができず、基本的にはすべてが1つの同じ価値として書き換えられてしまいます。 その結果、実際に存在する多様なニーズに対応できず、混乱と遅延が生じます。

ユーザーが引く赤線の価値をデータとして積み重ねることで、アグリミントがそれらの値をパターン化して把握し、ニーズに沿った最適な解決策を導き出すことで迅速なクロージングを可能にします。 法務が楽になれば、ビジネスも楽になります。

アグリミントは、著名なシード投資家からアイデアを得て誕生し、現在では世界市場で500社以上のお客様にご利用いただいています。従来のワードベースのドキュメントワークフローに比べ、契約締結までの時間が10倍速くなっていると確信できます。

働くということ

起業家としての自分を考える時、私は常に自身の生い立ちを思い出します。ウィスコンシン州北部の小さな町で、生活保護を受けたシングルマザーに育てられました。私の最初の仕事は、畑でラズベリーを収穫することで、1パイント(474ml容器)あたりの報酬は16セントでした。人生で1ドルのためにこれほど一生懸命働いたことはありませんでした。大学も含め自費で通い、早くに父を亡くした私は、何が自分を突き動かすのか、何に自分が喜びを感じるのかを常に意識するようになりました。

ではそれは何か?それは、人を導くこと、奮い立たせること、楽しませること、そしてコーチングすることです。誰かを笑わせること、誰かの人生に良い変化をもたらすこと。私は、不可能を可能にすることに刺激を感じています。

これには、私自身の話も含まれます。ウィスコンシン州の生活保護を受けていた子どもが、今ではベンチャーキャピタルの支援を受けた会社の起業家となり、多くの一流企業のワークフローを支援できています。

苦労があってこそ、本当の意味で幸せになれるのです。

(取材=宮尾卓志 写真=Agreemint)


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