オンライン上のオフィスで組織に生産性とスピードを【ラジブ・アヤンガー/Tandem社】

Leader's Info

ラジブ・アヤンガー氏(写真中央)は、リモートワークにおいて円滑なオンラインコミュニケーションを提供する タンデム社(サンフランシスコ)の共同創業者兼CEO。同氏と共同創業者のBernat Fortet氏とTim Su氏は、最初は別の事業を手掛けていたが、2019年初めに集まり、共同でタンデムを設立。2019年夏のY Combinator Demo Day参加し、多くのスタートアップ企業の中でも目玉企業であると注目され、アンドリーセン・ホロウィッツなどの著名な投資家から750万ドルを調達した。

Leader's Viewpoint

スタートアップ創業時

"すべての会社はリモートカンパニーである" 私は2019年のYC Demo Dayのステージ上でこのように言いましたが、その意味は、すべての会社は規模が大きくなると分散型になる(複数のオフィス、テレワーク、在宅勤務)ということです。世界的なパンデミックでこのことが明白になるとは予想していませんでした。数週間でタンデムの使用率は30倍に跳ね上がりました。

YC Demo Day, Summer 2019 https://blog.tandem.chat/the-virtual-office-is-here-to-stay/

2019年に見られた企業の動向はCOVID-19のパンデミックを考えれば当然の結果でした。感染対策をしつつ事業活動を継続するため、スタートアップからフォーチュン500に至るまで、あらゆる規模の企業がバーチャルオフィスを必要としていました。

私たちは、そのニーズに応えるためにチームを4倍に増員しました。SNSやメディアでも大きく取り上げられ、タンデムやその他の新しく立ち上げたバーチャルオフィスを「リモートツール」や「コラボレーションツール」のカテゴリーに加えましたが、それらの記事は、バーチャルオフィスが他の製品とは異なるカテゴリーであることを理解していませんでした。

バーチャルオフィス

Slackが登場する前、企業は社内のコミュニケーションをすべてメールで行っていました。次々に入れ替わるグループと延々と続くスレッドで、冗長で混沌とした議論が行われていました。Slackは最初からビジネスの場として設計されており、摩擦を減らし、スピードを上げ、整理することで、電子メールに取って代わる存在となりました。

同様に、リアルタイムなコミュニケーションを行うためには、かつてはダイヤルイン式の電話会議に頼っていました。Zoom/Meet/Webexでは、ビデオやウェブリンクが追加されましたが、コンセプトは同じでした。バーチャルオフィスは、このモデルをシンプルなメカニズムで覆します。チームメイトに話しかけるには、その人をクリックします。最初は衝撃的なほど直接的に見えますが、現実のオフィスではごく自然なことです。

SlackやMS Teamsは非同期のチャットとしては優れていますが、メンバーの在籍表示はほとんど意味がありません。また、テキストチャットでは信頼関係を築くことができません。これは、Slackが会話よりも事務的で人間味に欠けると感じる理由でもあります。

バーチャルオフィスはプレゼンスを高め、摩擦をなくすことで、分散したチームに対面で仕事をしているようなライブ感をもたらします。簡単に言うと周りに誰がいるかを確認し、ワンクリックで話すことができます。バーチャルオフィスで最初に気づくのは、通話が格段にしやすくなったことです。従来の電話会議アプリでは、設定や接続に何分もかかるなど、不便で制限が多いと感じていました。タンデムでは会議の前後に「肩を叩く」、「水を飲みながら話す」、「廊下で話す」などが可能になります。摩擦をなくすことで、自発的なつながりや安心感を生み出すことができますが、本当に重要なのは「プレゼンス」です。

プレゼンス

現代のコミュニケーションにおけるプレゼンスとは、チームメイトのコンテクストを直感的に認識することを意味します。例えば、実生活では、チームメイトに質問をしたいと思っても、振り向くと相手がヘッドフォンをしてコードを書いていることに気付き、質問は後回しにしようと思うかもしれません。

真のリアルタイムプレゼンスは、オフィスで同僚と一緒に仕事をしているような感覚をもたらします。孤独を感じることはなく、振り向くだけで簡単に人と話ができているような気にさせます。タンデムでは、仕事がアクティブ中であることを表示するオプションがあり、他のメンバーが自分の状況を認識しやすいようになっています。メンバーがターミナルとVS Codeを切り替えているのを見ると、彼がコーディングをしていることがわかります。各人が自分のプレゼンスをコントロールしているという注意点はありますが、より多くのシグナルがあった方が良いでしょう。例えば、カレンダーの空き状況、聴いている音楽、キーボードから離れているかどうかなどです。そしてもちろん、実際の会議や部屋で人々が話しているのを見ることは、プレゼンスの強力な要素の1つです。

Tandem通話では、相手のGoogle Docアイコンをクリックすると、その人のドキュメントにジャンプすることができ、許可があれば「同じページを見る」ことができます。結局のところ、プレゼンスはシグナルの集合体ではなく、ストーリーなのです。チームが部屋の中でGoogle DocsとFigmaを切り替えているのを見ると、彼らが仕様やデザインを検討していることがわかります。別のメンバーが会議でまだ話しているのを見ると、その一人が私との1:1ミーティングに遅れてくる理由がよくわかります。バーチャルオフィスは、このようなミニストーリーを照らし出し、真のリアルタイムプレゼンスを実現します。そうすることで無駄な調整を大幅に省き、チームに自然なリズムでのコミュニケーションを取り戻します。

サービスのこれから

生産性と組織のスピードにこだわる人にとって、バーチャルオフィスは大きな変化をもたらしますが、その理由を理解するのは難しくありません。リアルタイムでの会話は信頼を生み、信頼はスピードを生みます。また、より多様で「活発な」コミュニケーションは、創造性や生産性の高いチームを作る上で不可欠な要素です。

チームはより生き生きとして、つながりを感じますし、チームメイトがお互いに話しているのを見ると、エネルギーが伝染していきます。内向的なメンバーであっても、助けを求めたり、新しいアイデアを共有したりすることに抵抗を感じなくなります。チームの一体感が増し、新しいチームメンバーは、すぐに帰属意識と仲間意識が感じられます。チームを、同僚としてだけではなく、人間としてお互いを知るようになります。

バーチャルオフィスはオーディオ・ビデオ技術の向上や若年層の社会進出と相まって、よりリアルタイムなリモートワークへの流れを加速させました。リモートファースト企業の第一波は、非同期のコミュニケーション(SlackやDocsなど)を多用することで、リモートワークの課題を解決しました。彼らの成功は賞賛に値しますが、完全に非同期化することはこれまでの仕事の進め方を根底から覆すものであり、ほとんどの企業はそれを行うことができません(また行いたくもありません)。人間は社会的な生き物であり、多くの研究がなされているように、話すことで信頼を築くことができます。

今では、ビデオ通話の品質が向上しています。私たちの意識も変化しました。パンデミックを経て、私たちは皆、ビデオ通話の基本を使いこなせるようになりました。タンデムや他のバーチャルオフィスは、ZoomやWebExなどのビデオ会議アプリが道を切り開いてくれなければ、通話のUX(摩擦を減らし、コラボレーションを促進する)を革新することはできなかったでしょう。

これに加えて、ミレニアル世代とZ世代が社会人になるという人口動態の変化があります。彼らはビデオやオーディオに慣れ親しんでおり、多くはDiscordTeamspeakなどのボイスチャットアプリを使って、リアルタイムのマルチプレイヤーゲームで協力プレイwしたり、世界中に友達を作ったりして育ちました。

タンデムでは通話中にチームがFigmaを使っているのを見て、ワンクリックで彼と一緒になってデザイン作業ができます。また、Notionの仕様について彼に質問をしても、リンクを送る手間を省くことができ、彼もワンクリックで私に参加できます。このようにして、対面よりも優れたコラボレーション環境を作ることができます。

これがどこに向かっているのか、『マイノリティ・リポート』のUIを見てみましょう。具体的な技術は抜きにして、ペースと感覚に注目してみてください。

これこそが、コラボレーションのあるべき姿です。即効性があり、個人的で、本能的なもの、私たちが導くバーチャルオフィスの目指す形です。

(参照, https://blog.tandem.chat/the-virtual-office-is-here-to-stay/)

(取材=宮尾卓志 写真=Tandem)


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