【realis + ASU】「デジタル社会を見据えた」AI人材の育成と「人の気持ちを表現できる」AI開発

株式会社realis + ASU(愛知産業大学)

株式会社realisと愛知産業大学は、説明可能なAI(XAI)を活用した日本初の学科であるスマートデザイン学科において「人に寄り添うAI」の開発と、AI人材の育成に取り組んでいる。

AIの発展と社会的課題

AIは、最先端テクノロジーの代名詞になっており、様々なビジネスや商品で目にすることが増えている。しかしその全てが人工知能とまで呼べる機能が備わっているかは懐疑的であり、単純な質問パターンから決まった答えを返すだけのプログラムにもAIと付けて商品化されている。

第3次AIブームと呼ばれるこの流れの火付け役となったのは、「ディープラーニング」だろう。人間の脳の仕組みから考えられたニューラルネットワークを多層化したディープラーニングは、最適化された分野においてすでに人間を超える性能を発揮している。

AIを搭載したソフトや機械が人間に変わり様々な仕事をする世の中は、誰もが想像に難くない近未来のように思える。しかし、AIや人工知能という言葉だけが先行し、「何をしているのか」「なぜそうなったのか」がわかりにくく、AI技術の発展によって予測される職種の淘汰などの社会問題や批判的な専門家の発信も相まって、漠然とした不安感や不信感が世間に漂っていることも事実である。

最新テクノロジーが時代を変えるときには、得てしてこのようなギャップが発生する。この流れを適応する方向へ変えていくのは、いつの世も「若い力」だったのではないだろうか。

愛知産業大学は2019年に、株式会社realisの代表取締役でもある伊藤庸一郎氏により新たな教育カリキュラムを編成し、スマートデザイン学科を創設した。AI生成プラットフォーム「Thinkeye」を学生に公開し、AI開発に必要な考え方やアイデア構築、製品化までを経験することが出来る。

伊藤教授が開発したThinkeyeは、 導き出した答えの理由やプロセスを説明できる 「XAI」を採用しており、現在XAIは世界的に注目をされている。

伊藤庸一郎研究室の様子

AIに対する不信感を解決するXAIと人材育成

人が思いもつかないような答えや、人類を害する可能性がある発言をしたとAIが話題になったことは印象深い。なぜその答えに至ったのかを説明が出来るXAIは、AI開発分野に寄与するだけでなく、AIに対する不安や不信感を払拭し社会に浸透していくために欠かせない技術である。

愛知産業大学造形学部スマートデザイン学科はXAIを使いこなす文系AI人材を育成することを目的にした日本初の学科であり、開設初年度より2年続けて入学定員を上回っている。同教授が代表を務める株式会社realisをはじめとする協力企業から実務家教員が配置され、学生をAIのプロフェッショナルに育てるカリキュラムを進めている。

2020年には、スマートフォンで人物の思考や言動を模倣するデジタルクローンが生成出来る「Thinkeye VOID」を学生に提供。人の思考やスキルをpersonaとして自動生成し、心理モデルを構築。学生ごとに得意分野や興味の深い分野の「persona AI」を開発している。

メタバースで躍動するデジタルクローン

人に寄り添い、人の心を表現することができるThinkeyeは、すでに経済活動が活発化しているデジタル社会「メタバース」に親和性が高く、人間味のある接客が行える店員やスタッフを作り出すことができる。

さらにThinkeyeで作り出したデジタルクローンに接触したユーザーを自律的に模倣することで、デジタルクローンの自動増産が可能であり、様々な人間性のデジタルクローンをスタッフにした店舗運営など活躍の場は限りなく広い。

物理的な制限がなく、経済圏を拡大していくと予想されているメタバース。AIとヒトの関係性はメタバース内でより深くなっていくだろう。アバターを人が操作しているのか、AIなのかわからないデジタル社会も想像に難くない。

Thinkeyeで作り出された「ヒトの気持ちを表現できるAI」とは気づかす、ヒトと同じように会話をしている未来はすぐそこまで来ている。

COMPANY

社名:株式会社realis

設立:2018 日本

創業者:伊藤庸一郎

資金調達:2億円

分野:AI、デシジョンツリーラーニング、メタバース

創業者

伊藤庸一郎氏。株式会社realis 代表取締役、愛知産業大学 造形学部 スマートデザイン学科教授。

株式会社realisの代表取締役を務める伊藤庸一郎氏は、ヒトにやさしいAIをつくるプラットフォーム「Thinkeye」を開発。現在、AIを活用した人にやさしいデザインのあり方を研究している。

また2019年には愛知産業大学 造形学部スマートデザイン学科を創設し、教授としてスマートデザイナーの育成をしている。

伊藤氏は語る。「人に寄り添い、人の心を表現することができるThinkeyeは、 機械(AI)であってもヒトの心に影響を与えることはできるため、そのAIをデザインするヒトの責任は大きい。そしてヒトの心に働きかけるAIはディープラーニングのようなブラックボックスであってはいけない。説明可能でヒトがデザインできるAIで世界を変えていきたい。」

伊藤庸一郎氏

(Photo: realis , https://smartdesign.ai/


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