サステナビリティに信頼が持てるファッション業界へ【ステファニー・ベネデット/Queen of Raw社】

Leader's Info

Stephanie Benedetto

Stephanie Benedetto(ステファニー・ベネデット)は、「環境汚染を削減するための未使用繊維のマーケットプレイス」を提供するQueen of Raw(クイーン・オブ・ロー)社の創業者兼CEO。

同社を立ち上げる前は、ファッション、メディア、エンターテインメント、スタートアップ、テクノロジー業界で弁護士として働き、繊維製造施設を共同で設立。

ベネデットCEOは「2020 Inc. 女性創業者 100」「カルティエ・ウーマンズ・イニシアチブ」「NASA/NIKE/IKEA/DELL LAUNCH.orgイノベーター」「WeWorkクリエイターアワード大賞」など数々の表彰を受け、国連とパートナーシップを結びながら循環型経済をリードする。

WeWork Creator Awards 優勝

Leader's Viewpoint

ーースタートアップ創業のきっかけ

ステファニー・ベネデットCEO(以下、ベネデット): 毎年1,200億ドル相当の未使用の繊維製品が、倉庫に放置されて埃をかぶったり、焼却されたり、埋め立てられたりしています。 世界中のサプライヤー、ブランド、小売業者に話を聞いてみると、その原因がわかってきました。

すべての製造工程のうち、約15%が廃棄物となるのです。つまり、これは特定のビジネスモデルに限った問題ではなく、世界中すべてのサプライチェーンで発生しているのです。

廃棄物の中には、実際には再利用可能なものも一定の割合で含まれています。 しかし、これまでは再販する手段がなかったため、いつまでも倉庫に保管されたり、焼却されたりしていました。

クイーン・オブ・ロー社のマーケットプレイスでは、学生、メーカー、クラフター、キルト職人、独立したデザイナーから、世界最大のブランドや小売業者まで、誰もがエンドオブロール生地や未使用生地の売買ができます。 埋立地に捨てない、そして汚染を利益に変えることが可能なのです。

ーーサービスの差別化ポイント

ベネデット: 私たちが考えるマーケットプレイスとは、UberやAirbnbのようなものです。 車やアパートのように活用されていない資源を、需要と供給の連鎖に戻していくのです。

しかし、本当に素晴らしいのは、そうすることで、他の方法では集めることができなかった世界中のコミュニティを結びつけることができ、それがあらゆる種類のマーケットや追加のソリューションの創出につながるということです。

私たちは、ブロックチェーン機械学習・AIを活用して、一反の生地の履歴を追跡し、その追跡が正しいものであることを証明できる記録システムを構築しました。 これは業界がこれまで成しえなかったことです。

企業にとって重要なのは、正しいデータを取得し、分析し、それに基づいて行動することです。そして、SDGsに取り組み、実行することです。

しかし、環境問題やサステナビリティに貢献していることを、公に伝わるようにすることも同様に重要です。というのも、企業は素晴らしいことをしているにもかかわらず、それを胸の内にしまっていることが多いからです。

発言が大胆に思われすぎないかとか、もしサステナビリティの取り組みが誤った情報に基づいていたことが判明した場合、顧客や報道機関とトラブルになることを恐れているのです。

しかし今では、水の使用量や染料の有害性、エネルギー消費量などについて、ブロックチェーン技術によって証拠を持って発言できるようになっています。

私は、そのような情報を収集しながらそれを公表しないのはとても勿体ないと考えます。 そんなことをしていたら、コストや廃棄物を削減しても、ブランドの評判や顧客のロイヤリティ、トップラインの売上を向上させるチャンスを逃してしまいます。

ーーサービスの未来

ベネデット: COVIDが私たちに教えてくれた最大のことは、現状ビジネスの問題点は何か、ということだと思います。 今はまだ心が暗いかもしれませんが、未来について考え始めたアイデアにはたくさんの光があり、たくさんのチャンスがあります。

なぜなら、次世代のサプライチェーンは、オンデマンドで、よりローカルで、よりサステナブルで、よりデジタルなものになるとわかっていますし、ファッションビジネスがその先を行くことができれば、生き残り、成功が掴めると信じています。

今、私たちは本当の意味での転換期にあり、スタートアップから大企業まで、自らを奮い立たせ、これまでとは違うことに挑戦しようとするすべての人にとって、大きな可能性を秘めています。

私たちの世界は、文字通り変化を求めています。ブランドや小売業者に問われているのは、恐竜のように変化に適応できずに滅びてしまうのではなく、どうやってその変化の一部になれるかということです。

そして私にとって、デッドストック素材は、最も強力な未開拓の調達メカニズムとなりました。デッドストック素材をはじめ、無駄にしてきたものの効率化を大切にすることが、結果環境保護に繋がり、ファッション業界や世界が必要としている未来に向けてのチャンスを創造すると信じています。

Cartie Women's initiative

(取材=宮尾卓志 写真=Queen of Raw)


スタートアップレビューでは厳選されたスタートアップ企業にのみ直接取材、掲載許可をいただいて記事を発行しています。
現在日本で成功しているサービスも、海外スタートアップから着想を得てローカライズされたものが多くあります。次のビジネストレンドとアイデアのアップグレードにお役立てください。