
ストックデール・ブライアン氏は、飲料水のディスペンシングと決済の一体化を可能にしたプラットフォームを提供するインテリカップ社(南アフリカ)の創業者。
- Startupbootcamp Melbourneのスポーツ・イベントテック部門でトップ10
- マドリッドで開催されるWFS(ワールドフットボールサミット)への出展
- ラスベガスで開催されるAssociation of Luxury Suite Ownersへの出展
- 多数の国際的なアクセラレータプログラムに選出
スタートアップ創業のきっかけ
インテリカップの開発は、大勢の人が集まるイベントでの飲料提供サービスの課題を分析することから始まりました。その結果スポーツイベントや音楽コンサートの会場で長蛇の列に並び、試合やステージの再開時間に間に合わず、挙句質の低いビールや飲料しか手に入らない事実があったのです。
また、現在の飲料ディスペンシングシステムは、完全に統合されたディスペンシング・プラットフォームを提供しておらず、取引や消費者データにリアルタイムにアクセスできません。
これは、ビールの鮮度や飲みにくさなどによるブランド価値低下の面でも、イベントの来客にとっても良いことではありません。インテリカップの開発は、B2BとB2Cの両方でのサービスソリューションとなることがわかりました。
開発経緯
最初に開発したのは、底面にビールを入れるカップを使った「クイックビールディスペンサー」でしたが、テストの結果、これでは待ち時間や滞留時間を短縮することができず、既存のクイックサーバーと同程度にしかならないことがわかりました。
私たちは、支払いと注ぐというアクションをリアルタイムに統合することが、プロセスを高速化する唯一の方法だと考えました。そして、再利用可能なNFCチップをサステナブルなカップに組み込み、管理サーバーや銀行プラットフォームと通信するインテリヘッドに読み取らせることで、シームレスな「キャッシュレス」決済と衛生的な「ハンズフリー」ディスペンサーを実現するための開発が行われました。その結果、15秒で注ぎ終わると同時に支払いが完了する技術を確立しました。
衛生面ではディスペンサーのインテリヘッドを自動洗浄できるように改良しました。さらに消費者からのフィードバックを得るため地元フードマーケットとディスペンサー契約をし、すべての開発テストを消費者の目の前で実演。アルファ版、ベータ版を経て製品が完成しました。
差別化ポイント
現在のイベント会場やスタジアムのインフラそのものは依然として古い技術に支えられており、SNS映えを求める現代の参加者に備えができているとは言い難いです。現代の参加者に喜んでもらうには、会場内でのカスタマージャーニーやイベントそのもの以外の体験も向上させる工夫が必要です。
インテリカップは、既存のインフラに後付けすることも、移動式ユニットにすることも可能で、イベント時の群衆移動に合わせた柔軟な運用を実現します。また、スタッフがやるよりもスピーディー、衛生的、かつ正確に注ぎ、その上キャッシュレスです。さらにディスペンシング中に消費者とライブ会話(コンテンツのプレゼン・クーポンの授与・接客サービス)が可能なので、ユーザー体験を強化でき、イベント主催者や飲料メーカーのブランド・エクイティを構築します。
サービスの未来
インテリカップは、南アフリカのライセンシーと契約し、専門家と協力してインフラを支援し、50:50のレベニューシェアで現地のパートナーと展開しています。また、現在南アフリカ、英国、米国の市場でさまざまなPoC(概念実証)を行っており、ライブネーション、コンパスグループ、スタジアム、レストラン・チェーンなどと提携しています。このシステムは国際的にも完全に運用可能です。
市場では、インテリカップが既存のシステムよりも優れていることが十分に認識されており、多くの企業が採用する前に、より包括的な試験を実施しています。2021年9月から12月の間、英国におけるライブ・ネーションのPoC(カールスバーグとの提携)を実施し、4つの会場で70のイベントに対応し、1時間あたり2,000本のビールを提供しています。
主要市場での成長を促進するためのステージとして、現在75万ドルに対し10%の株式で資金調達を市場に提示しています。私たちの焦点はPoCでの成功を基に、投資家と協力して、適切なインフラを整備しながら成長を促進させることです。
インテリカップは環境維持を前提としています。生分解性が高く、リサイクル可能な専用カップを使用することで、二酸化炭素排出量を削減します。
これからも環境への配慮を大切にしながら、インテリカップを利用する消費者も、メーカーも、イベント主催者も喜んでいただけるサービスを追及していきます。
(取材=宮尾卓志 写真=IntelliCUP)