
ティム・グレーサー氏はコミュニティからのフィードバックに基づいた分析ソフトウェアを提供するポストホグ社(サンフランシスコ)の創業者。
グレーサー氏は2019年8月に、エンジニアの技術的負債の管理を支援することに焦点を当てたスタートアップを立ち上げた。この取組は残念ながら成功には至らなかったが、多くのエンジニアがユーザーへ与えている影響を理解できていないことに気づき、今のスタートアップの糧となっている。
ポストホグは、他の分析プラットフォームとは異なる3つの基本原則に基づいて構築されている。
1)ユーザーデータを第三者に提供しない
2)基礎となるデータ全てにアクセスできる
3)ユーザーが価格をコントロールする
同社のソフトウェアは、イーロン・マスク氏がCEOを務めるスペースX社も利用している。
Leader's Viewpointスタートアップ創業のきっかけ
世の中にはたくさんの製品分析ツールがありますが、それらのツールはすべてSaaSベースです。これらのツールは非常に強力ですが、すべてのユーザーデータを第三者に提供したり、基本的なデータに完全にアクセスできなかったり、価格の選択ができないといった点で多くの課題があり、開発者にとってはフラストレーションが溜まるものでした。
2020年2月にW20 Y Combinatorバッチへの参加に成功し、その4週間後にHackerNewsでMVPを発表しました。反響は想像以上に大きく、その後わずか2日の間に300以上のデプロイメントが行われました。さらにその2週間後には、GitHubのスター数が1,500を超えていたのです。
ポストホグが個人開発者に受け入れられたことによって、企業にとっても非常に魅力的なソフトウェアであると認識されていきました。結果多くのインバウンド需要があり、私たちはポストホグを伸びしろが期待できるサイドプロジェクトから、企業の中枢サービスへと認識を変えざるを得ませんでした。
業界の現状
私たちは、サードパーティ製の製品分析ソフトウェアの時代は、いずれ終わると考えています。
クッキー法、 GDPR (EU一般データ保護規則)、 CCPA (カリフォルニア州消費者プライバシー法)、その他多くの4文字の略語が飛び交う世界では、個人情報の取り扱いが厳しく制限され始めており、サードパーティ製の分析はもう通用しないと私たちは考えています。顧客の個人情報や利用データをすべてGoogleのようなサードパーティに送ることに「替わる方法」があるはずです。
サービスの価値
ポストハグは、ユーザーからのすべてのデータを完全にコントロールし、強力なアナリティクスを可能にします。コストやプライバシーの理由から、第三者のトラッキングサービスにデータを送信できないことも往々にしてあります。その結果、データレイク(ビッグデータ処理、リアルタイム分析、機械学習などを一元化して保存できるもの)に複雑なデータパイプラインを構築し、その上にアナリティクスプラットフォームを構築することになります。それを理解しているのは、結局、一部のデータアナリストだけに限られるのです。
ポストハグはこれらの課題をすべて解決する自信があります。データを第三者に送ることなく、大規模なスケールであっても、社内のすべての人が独自に理解して使用できる製品分析に簡単にアクセスできるようにします。
(取材=宮尾卓志 写真=PostHog)