アフリカ物流は最大の問題ではなく、最大のチャンスである【トネ・メンバー/MVX Trade社】

Leader's Info

トネ・メンバー氏はMVXトレード社(ナイジェリア)の創業者。2012年ブラッドフォード大学(英国)を卒業し、2013年(1~9月)ナイジェリア海運会議所で研修後、同年10月にアプリ開発などを手がけるMembêre Longeを共同で設立。

2015年から2019年まで、海上ロジスティクスの総合会社Elshcon Nigeria Limitedで勤務(2017年からは最高戦略責任者) 。IMDビジネススクールを修了。

Leader's Viewpoint

ーーアフリカ物流と、その中で目指しているソリューションをお聞かせ願えますか?

トネ・メンバーCEO(以下、メンバー):は、すべての予約と展開のプロセスをオンライン化することで、あらゆる規模の企業の貨物輸送をより簡単に、より統合的にします。当社は一つのデジタルプラットフォームを通じて、エンドツーエンドの陸上輸送、フォワーディング(輸出入)、通関サービスを集約、同期化し、簡略化しています。

また、アフリカ企業の資金不足を解消するため、製品の調達や運賃の支払いに必要な資金を融資する金融サポートも行っております。

アフリカの物流業界は、貨物の輸出入を促進するプロセスが断片的で不透明、且つコストもかかるため、最適な運営状態とは言えません。 加えて、アフリカの貿易部門に関するデータはほとんどないのです。これらの問題は、貨物の予約や展開に関わる活動の大部分がオフラインで行われていることに大きく起因しています。

MVXは、この分野で活躍するプレイヤーに、デジタルで集約された貨物輸送、およびエンドツーエンドの物流サービスを提供することで、この分野をより効率的に、より簡単に、そしてより連携的にしようと考えています。

ーーこれまでの取り込みや、それによる刺激もしくは成長も教えて下さい。

メンバー :私たちのソリューションは斬新で、非常に大きな反響がありました。当社は創業以来、コスト、効率、調整という3つの課題を解決するサービスを作ることに注力してきました。

この3つの課題がビジネスの成功にどのような意味を持つのかを市場に理解されているため、これまでのところ好評を得ています。私たちは、農業、エネルギー、テクノロジー、電力、製造業、建設業など、さまざまな分野における無数の企業との仕事を成功させてきました。

伸びしろは非常に大きいです。しかし、過去と現在の成功例を基に、ステークホルダーやお客様に持続して価値を提供するために、より良いサービスを開発していきます。

ーーアフリカ大陸自由貿易圏がアフリカのコマースと物流に与える影響は?

メンバー :世界銀行の試算によると、AfCFTAが順調に進めば、2035年までにアフリカ経済は4,500億ドルの収益を上げ、少なくとも3,000万人が貧困から脱却できるとされています。AfCFTAは、アフリカが経済的に繁栄するための非常に大きなチャンスであり、商業と物流、特に域内物流は莫大な利益をもたらすものになると考えています。

国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2017年のアフリカ輸出総額に占めるアフリカ内国家間輸出の割合はアフリカが16.6%でした。ヨーロッパが68.1%(ヨーロッパ内国家間だけの輸出)、アジアが59.4%、アメリカが55.0%とそれぞれ高いですが、アフリカ内国家間輸出は前年まで2%だったことを考えると凄い成長率です。

さらに、AfCFTAが実現すれば、アフリカ域内の物流が加速し、アフリカ諸国の間で商業活動が活発になるでしょう。また、道路、航空、海上の接続が改善され、アフリカのさまざまな市場へのアクセスが容易になることが期待されます。

ーースタートアップとして活動する上での課題や利点も教えていただけますか?

メンバー:課題としては、インフラの不備や、政府の不安定な貿易政策が挙げられます。例えば、ナイジェリア政府は一時期、特定の商品の輸入について国境を封鎖したことがありました。その影響は、この地域のビジネスの広範囲に及びました。

政治的環境以外にも、不透明なプロセスや断片化、信頼できるデータの欠如などといった様々な問題がありますが、そのいくつかを私たちのソリューションで解決するつもりです。ですので、こういった問題はすべてチャンスだと考えています。

我々にとってのメリットは、課題を上回るものです。この分野はまだ先進的ではありませんが、テクノロジーと自動化を導入することで、この分野の多くの問題に対処できると考えています。AfCFTAによって貿易が加速し、当社の組み込み型貿易金融のような製品に門戸が開かれることを期待しています。

数年後には、効率的な貨物の予約やロジスティクス・ソリューションに対する需要が高まると予想しています。特にこの分野における課題は、アフリカ貿易の急成長のために、私たちが活用できるチャンスなのです。

ーーよろしければこの分野への投資状況の進捗もお聞かせください。

メンバー:近年、この分野へのベンチャーキャピタルの投資が急増しています。これは、投資家がこの分野を急成長の可能性を秘めた、重要でありながら未開発のフロンティアだと考えているからです。この分野のビジネスはアフリカ全土で注目を集め、投資を確保しています。

ナイジェリアのKobo 360やケニアのLori Systemsは、この業界への投資がどれほど進んでいるか、そして今後どうなるかを示す代表的な例です。

私たちは、Launch Africa、Kepple Africa、Oui Capital、Founders Factory Africa、Century Oak、Plug & Play Venturesなどの先進的な投資家からも資金を調達しています。アフリカ全土の貿易が加速していく中で、当社がリーディングカンパニーとなれるよう、ソリューションを拡大していきます。

(取材=宮尾卓志 写真=MVX)


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