ハイブリッドオフィスに新しい常識を吹き込む【ゼザール・ブハーリー)/Zynq社】

Leader's Info

ゼザール・ブハーリー氏は、オフィススペースの管理と最適化を行うプラットフォームを提供するジンク社(サンフランシスコ)の創業者。

マイクロソフト社とGoogle社でプロダクトマネージャーとして勤務した後、Googleで出会ったDavid Cottrell(デイビッド・コットレル)とジンクを設立。

ハーバード大学卒業。

共同創業者兼CTO David Cottrell

Leader's Viewpoint

――このCOVID-19の時代に、ご自身やご家族はどうされていますか?

ゼザール・ブハーリーCEO(以下ブハーリー):幸い、ウイルスや経済不況の影響を受けずに済んでいますので、とても感謝しています。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。

――Zynq(以下、ジンク)設立の経緯について教えてください。

ブハーリー:私たちは、グーグルでエンタープライズ製品の開発に携わっていましたが、ソフトウェアの革新があるにも関わらず、企業の事務所は依然としてエクセルシートとメンタルマップで管理されていることに気づきました。リモートワークが普及するにつれ、ますます多くの社員が自宅と両方で仕事をするスタイルを選ぶようになると考えました。そうなった場合に生じる複雑性に対処できるソフトウェアが不可欠だと確信した私たちは仕事を辞め、会社を作り、Y Combinatorを経て、ロサンゼルス・ドジャースやMessageBirdなどの素晴らしい企業と取引ができています。そして今は、人々の働き方を変えられるということに、これまでにない高揚感があります。なんといっても、自分でより生産性の高い方法を考えて行動できるような、柔軟な職場環境を実現する手段を世に送り出せるからです。

――ジンクのイノベーションとは?

ブハーリー:私たちの選択肢は常に2つで、「革新か、死か」です。パンデミックの最中に成長したアーリーステージの企業として、市場は通常よりも速く変化しています。世界を変えるチャンスを得るためには、その変化を追い風にして既存企業よりも速く成長しなければなりません。既存顧客や新規顧客から得たデータや市場動向を再考し、今取り組んでいることにまだ意味があるかどうかを判断する毎日です。小さな方向転換を毎週何度も行っているのではないでしょうか。この慣習がなければ、とっくに死んでいたでしょう。このメンタリティのおかげで、お客様が切実に必要としている機能を作り出すことができました。それが、ハードウェアを使わないコンタクトトレーシング(接触確認)、自動化されたキャパシティ管理、チームの親密度を基準にした座席配置など、オールインワン型プラットフォームなのです

――パンデミックがビジネスに与えた影響を教えてください。

ブハーリー:COVIDが最初に流行したとき、私たちは物理的なオフィスが近い将来存在しなくなるのではないかという恐怖を感じました。ジンクは多くのお客さまや見込み客を失いましたし、状況は好転しそうにありませんでした。しかし、何週間か経つと、完全なリモートワークへの移行がほとんどの企業にとっての解決策ではないことが明白となり、オフィスでの仕事が以前とは違う形ではあるものの、戻ってくることは確実でした。パンデミックの影響で、多くの企業がフレキシブルなオフィスを今後の文化の中核に据えようと検討しており、この未曾有の時代でなければ私たちに声をかけてくれなかったようなお客さまもいらっしゃいます。

――パンデミック中において、難しい決断はありましたか?

ブハーリー:究極的な決断をしました。私たちはそれまでの製品を停止し、アイデアを完全にピボットさせました。しかし、いずれも後悔はしていません。創業者としてできる最善のことは、市場の声に耳を傾け、それに応じて変化することです。未来のお客様を失うくらいなら、先細りしていく今の収益を断つことを選択すべきです。そして夢をあきらめず、そこにたどり着くまでの道のりを柔軟に考えることです。もし私たちが市場の声に耳を傾けていなかったら、パンデミックの際に成功するような製品を仕立てることはできなかったでしょう。これが未来の姿だと確信できていなければ、私たちのビジネスアイデアを正当に評価することなく、そこから離れていたでしょう。

――ストレスや不安にはどのように対処していますか?また、将来のジンクをどのように描いていますか?

ブハーリー:ストレスや不安は、創業者としては必要なことです。自身をどれだけ追い込めるかということも成功には大切な要素だとは思います。しかし、自分自身とチームのためにできる最善のことは、バランスを重視した文化を作ることであると感じています。気をつけないと、スタートアップに毎日のほとんどの時間を費やされてしまうので、可能な限りプライベートに時間を投資するよう、意識的にチームの全員に勧めています。私たちはこの会社を長期的に発展させようとしています。最初の数ヶ月で燃え尽きてしまっては実現しません。

――競合はどのような企業ですか?また、どのようにして優位性を築きますか?

ブハーリー:当社は複数の市場セグメントにまたがって事業を展開しており、新しいソフトウェア分野を切り開いているとも言えます。COVIDに特化したオフィス・ソフトウェアを構築している企業は競合他社ですし、不動産管理のSaaSツールはその対極に位置しています。

私たちが提供しているのは、ファシリティ部門や人事部門を問わず、物理的なスペースをエンド・ツー・エンドで活用・管理できる唯一のツールです。私たちが構築しているものに匹敵するものはありませんし、世界がオンデマンド・オフィスに移行するにつれ、その重要性はますます高まっていくでしょう。

――最後に一言お願いします。

ブハーリー:私たちは、柔軟性のあるオンデマンドのオフィススペースという新しい常識を開拓することにとても興奮しています。新しいオフィスのスタイルを検討しているすべての会社にとって、私たちは大きなサポートになります。

(取材=宮尾卓志 写真=Zynq)


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