オンライン会議から「退屈」を消し去るアプリ【フィル・リービン/mmhmm】

Leader's Info

フィル・リービン氏はmmhmm(ンーフー)の共同創業者兼CEO。mmhmmは、ZoomやGoogle meetなどのオンライン会議におけるビデオコミュニケーションをより伝わりやすく、より魅力的にする目的で開発されたアプリで、2020年7月の発表当初からWEBプレゼンを独創的に見せられるなど注目を集めている。

リービン氏は2005年にEvernoteを創業し、CEOとして何億人ものユーザーに愛されるサービスに育て上げ、2015年に後任のクリス・オニール氏へ引き継ぎCEOを退任した。その後、米有数のベンチャーキャピタルであるGeneral Catalystにマネージング・ディレクターとして参画したのち、現在はmmhmmを生み出したプロダクトスタジオでもあるAll Turtles社の共同創業者兼CEOを務め、AI関連のスタートアップ支援事業を行っている。

mmhmmでビデオを上手に(mmhmm公式チャンネル)

Leader's Viewpoint

――mmhmmの日本マーケットの位置づけをお聞かせ願えますか?

フィル・リービンCEO(以下、リービン):日本には、新しいテクノロジーに常に注目し、いち早く新しいアプリを使う方が多くいらっしゃいます。使い方の研究も熱心で、私たちが思いつかなかったような使い方も発見してくれます。mmhmmではベータ段階から日本語化することにより、製品改善のアイデアを早い段階から吸い上げることができました。もちろん今後は日本語以外の言語にも対応していきます。

また、日本だけではありませんが、私たちはマーケットを「商品やサービスを売るためのマーケット」という視点だけでは見ていません。日本を含めた世界を「商品やサービスに対するアイデアやフィードバックをいただくためのマーケット、そして、優秀なエンジニアやデザイナーを雇うためのマーケット」としても見ています。

特に日本についてお話しするとすれば、優れたデザイン・機能性・細部へのこだわり、カスタマーサービスの質などを学ぶべきだと考えています。よって、日本で採用を行い、日本からの知見を得たいと思っており、日本チームが主導して成功モデルを作っていくことを期待しています。

――ビデオ会議アプリに加え、ライブ配信サービスとのコラボなどのお考えは?

リービン:YouTubeライブではウェブカメラを指定できることから、mmhmmを使ってYouTubeライブを行っている方もいらっしゃいます。また、ライブストリーミング機能を加えることを検討中です。実現すればmmhmmからライブ配信を行えるようになり、外部のライブ配信プラットフォームでもmmhmmを活用してもらえるようになります。

mmhmmはこれまで、Zoom などのオンライン会議アプリと一緒に使う「コンパニオンアプリ」としてご利用いただいておりますが、mmhmm アプリ内でビデオコミュニケーションができるように開発を進めています。

また、録画機能を充実させていきます。視聴者が同じ時間帯に参加しなくてはならないオンライン会議やライブ配信だけでなく、録画した映像を好きな時に観られるものとして活用してほしいと思っています。録画した映像はライブ配信でも活用できます。何度も繰り返す部分には録画映像を使ったり、録画映像とライブ配信を切り替えながら魅力的な配信を作り上げることも可能です。

――学生や教員など教育機関に対し有料プランを1年間無料で提供したとお伺いしました。

リービン: パンデミックの中で、WEBプレゼン能力が一番必要になった分野の一つが教育です。対面の授業ができなくなり、オンラインで授業をせざるを得なくなりました。事実、2020年7月にmmhmmベータ版をリリース後、教育に携わる皆さまからの反響はとても大きいものでした。そして有料サービスを始める際、教育に携わる皆さまを応援する意味で、1年間プレミアム機能を無料で提供することにしました。

実際にmmhmmをお使いの教育関係者からのフィードバックをいただきますが、今後また対面授業ができるようになったとしても、ビデオの良さは捨てがたいという声を多く聞きます。例えば、遠隔地でも授業が受けられる、時間的制約で参加できなかった社会人向けに録画で提供するなど、ビデオを使ってできることはたくさんあります。

反転授業が注目されるなど、教育のあり方も変わっていくのではないでしょうか。録画した映像を授業前の好きな時間に見て学習し、実際の授業でのディスカッションはオンライン会議で行うといった新しい反転授業も、 mmhmmを活用すれば簡単に行えます。

――パンデミックに加え、日本では高齢化が社会問題としてもシニア市場としても大きく注目されています。

リービン: 良いサービスは年齢も国境も超えます。mmhmmは使い勝手の良いサービスになるよう心がけています。若者やテクノロジーに慣れ親しんだ人はもちろん早い段階で取り入れてくれていますが、mmhmmは教育者、エンターテイナーなど、必ずしもテクノロジーに長けた人だけでなく、すでに幅広い層のユーザーに使っていただいています。

また、今後はiOSやAndroid向けの製品も開発していく予定です。遠方に住む両親とのコミュニケーションで、小さいお子さんが絵を見せたり、動画を一緒に見るなど、まるで同じ場所にいるような環境で話ができるようになり、これまでのテレビ電話とは違った形の新しいコミュニケーションが生まれます。

パンデミックによって人の移動が制限され、ライフスタイルが急激に変化し、それに伴う心理的不安、社会問題が生まれてきましたが、私たちは分散型(distributed)チーム*での働き方を自ら実践しており、自らの学びを基に私たち自身のサービスをさらにアップデートしていきます。

*分散型チームについて:mmhmmはオフィスを持たず、社員は世界16カ国(2021/8時点)に分散しながら一つのチームとして働いています。

――最後に日本のカスタマーやビジネスマンに向けてメッセージをいただけますか?

リービン: 日本の皆さんと直接会ってお話する際には、いつも面白い意見をもらうことができます。私たちのチームではお客さまの声に必ず目を通していますので、ご意見・ご要望などをぜひお寄せください。より良い製品を一緒に作っていくため、皆さんの力が必要です。どうぞよろしくお願いします。

また、日本人のチームメンバーはすでに社内で活躍していますが、今後も素晴らしいエンジニア、デザイナーに参加して欲しいと思っています。多くのポジションで求人をしていますので、ビデオコミュニケーションの未来を一緒に変えたいという皆さんは、ぜひ応募してださい。

(取材=宮尾卓志 写真=mmhmm)


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